2025/3/30-4/5

第78号
上野友之 2025.04.06
誰でも

3月30日(日)

6:30起床。晴れ。

すみだパークシアター倉にて滋企画「ガラスの動物園」観劇。

個々としても座組としても相当な時間と手間をかけたであろう、素晴らしいクリエイション。

テネシー・ウィリアムズが2025年の日本で充分に現実味を伴って立ち上がっていた。

翻訳劇特有の壁がなく、スッと入ってくる。あれはなんなんだろうな。

素人みたいな言葉だが、「空気の作り方」「導入の仕方」としか言えない。

俳優、シンプルかつ奥行きを使った美術、音楽、全セクション素晴らしいが、特筆すべきは照明の当て方動かし方、影の作り方。お見事でした。

すみだは劇場としては良いのだけど、立地と駅からの距離で気軽に行こうとはならない。

実際かなり久しぶりだった。

恐らく俺のような観客もいると思うので、宣伝興業も難しいと思う。

しかも上演時間2時間45分。

にも関わらず、この良質の公演が好評によりあっという間に完売する小劇場界の目利き力にも、なんというか感心した。

桜も綺麗に咲いていた。

3月31日(月)

8:00起床。くもり。

イメージフォーラムにて映画『ノーバディーズ・ヒーロー』鑑賞。先週に続きアラン・ギロディ特集上映の一本。

中年男が路上に立っている50代の売春婦に金銭無しのセックスを申し込む。

いきなりそう始まる冒頭からして面白い。

今作は笑いの要素が多く観客にもウケていたが、テロへの恐怖を背景にセックスコメディを描く、というかなりチャレンジングなことをやっている。

卑近な下ネタとテロや差別は、世界に並列に存在していることに気づかされる。

芦沢央「許されようとは思いません」読了。

5本からなる短編集だが、どれも面白く、導入からオチまでキレも鋭い。

相当な手練れ感。

人の大小の失敗、罪、悪意が題材で、技巧的にも大変優れているが、いわゆるイヤミスを狙い過ぎてる感じはない。

児童虐待を扱った「姉のように」は特に秀逸。

叙述ミステリとしても面白い上で、望んで産み愛していた子供をなぜ虐待してしまうのか、その構造的な問題も見事に描出されている。

虐待する親は悪い、悲惨なニュースを見ても反射的にそう思う。その考え自体は変わらないが、虐待に陥ってしまう心理が、初めて実感できてしまったような気もした。

G対策のコンバットとブラックキャップを買って去年の物と置き換える。

個人的にはこれが春の風物詩。

去年の日記では4月10日。ついこの間のような気がする。それも去年の日記と同じ。

あとはずっと某案件のためのリサーチ。

今後のためにも経済的にもこれは何とか形にしたい。

フジテレビ問題で第三者委員会が調査結果公表。

当事者同士のメッセージのやりとりはじめ、詳細にまとめられていて驚いた。

他にも誰か誘ってるふりして結果二人きりになっちゃった、というのは暗黙の駆け引きとしてあるし、自分もしたこともされたこともある。

それを権力構造の中でやってはいけない。

ということだが、あのメッセージの生々しさ。

わけしり顔の中立気取りで、中居氏やフジは悪くない、悪いのは文春、問題などなかった、的なことを言ってた一部アカウントは何だったんだ。

4月1日(火)

7:00起床。雨。新年度だが真冬のような寒さ。

芦沢央「汚れた手をそこで拭かない」読了。版元は違えど、「許されようと〜」と同じく独立短編集。

やはり非常に面白かった。面白いというか慄くというか。

パトリシア・ハイスミスや、クリスティー「春にして君を離れ」を読んだ時の感覚に近い。

現代日本の日常生活の中で誰にも起き得るミス、トラブル、行き違い。

それを隠し、誤魔化し、先送りしたい人間が、一つ一つ選択を誤り取り返しのつかない事態に発展する。

登場人物の心理が充分すぎるほどわかってしまい、怖いが読み止められない。そのサスペンスの積み立て方が絶妙。

設計の上手さも、冷徹な視点の置き方も尋常ではない。

「だったらどうして……私は悪いことなんてしてないのに」
「悪いことをしたから悪いことが起きるとは限らないんだよ」
「ミモザ」(「汚れた手をそこで拭かない」芦沢央 所収)

映画の日だが終日寒すぎて映画館に行く気も起きず。

4月2日(水)

6:45起床。雨。引き続き寒い。

久しぶりに菊川のStrangerに行って映画『オーガスト・マイ・ヘヴン』鑑賞。

40分の短編映画が単独公開されてるのは、監督への期待や評価も高いのだろう。

工藤梨穂監督は前作『裸足で鳴らしてみせろ』が、(iPadの画面で観ても)素晴らしい撮影と演出と脚本で、ハッとするカットがたくさんあり、他の映画もスクリーンで観たいと思っていた。

個人的にプロットが前作よりは弱く感じたが、それでも画面から伝わる瑞々しさは変わらず。

『裸足で~』に続いて出演の諏訪珠理さん、工藤監督の映画でしか観ていないが、独特の繊細さ、色気、危うさを孕んだ表情や佇まいがとても印象に残る。

Apple TV「The Studio」今週も爆笑。だが時に命を削る映画製作の悲喜交々。コメディにしてるけど現実はもっともっとヘビーなことはいくらでもあるだろう。

ゲストはロン・ハワード監督。

色々やることもやる気もあったのだが、夜はすぐ眠くなり22時頃に横になり寝てしまった。

4月3日(木)

3:30に目が覚めたので一旦起きてプロット作業。

バラバラに思いついたアイディアをChatGPTに相談すると驚くほど的確なまとめと提案。

無課金でもこうなんだから、いよいよストーリー制作はAIが多くを担う時代になるのか。もうそうなのか。

二度寝して8:00起床。小雨。気温はまだ低い。

映画『ベイビーガー』鑑賞。

ニコール・キッドマン主演、ハリナ・ラインという監督によるA24映画。

巨大物流企業のCEOで、愛情ある夫と子供がいる50代女性が、20代の男性インターンに翻弄され性的主従関係を結び……というストーリー。

どうしても昨今の性加害事件が頭をよぎるし、このての話はどんどん心理スリラー的になったり、恐怖や暴力描写が増えたりしがち。

でも扇状的になり過ぎず、悲劇性やサスペンス展開もそこまで煽らないのが良かった。

性描写含め強い場面もあれど、全体的には静かな印象なのも新鮮。

撮影はとても良い。特にクラブでのダンスシーンはかっこよかった。

夫役はアントニオ・バンデランス。

かつてはザ・ラテンのセックスシンボルだったのに、「リベラルで愛情も理解もあるが性的魅力は足りずちょっとウザい男」の役でも説得力があり見事。

こういう、本人は散々モテてきたであろう男性俳優が、非モテとは言わずとも性愛において弱者側の男をやるのが上手いのは不思議だ。(といってもリチャード・ギアと成田凌さんしか思い浮かばなかった。)

ニコール・キッドマンはここ数年フル稼働。重要な映画やドラマシリーズで主演しつつ、多くで製作も兼任。

今回のようにA24系で女性監督をフックアップしつつ、エンタメもやりつつ、テイラー・シェリダンとまで組む幅広さが凄い。

どれもなかなかハードな役だし、働き過ぎではと要らぬ心配までしたくなる。

アメリカのように俳優がプロデューサーを兼任する流れ、日本でももっと広がると良いなと思う。

ブックオフで過去のミステリーなどまた大量に購入。

いつ読むんだという話だが、一応執筆の参考。

親しい友人がこの世を去って5年の日。

4月4日(金)

また深夜に目覚めてしまいその後は眠りが浅いまま7:30起床。久しぶりの晴れ。

変なタイミングでベランダの掃除。

夜はいよいよ、さよなら人生「高尾山へ」顔合わせ。

新スタートだ!と気持ちを盛り上げる。

実際楽しかった。

それについては別途、団体の方で日記を公開する予定なので宜しくお願いします。

終って、行けるメンバーで中華へ。

ビール三杯で酔っ払い、帰宅して何もできずに寝る。

夜はめちゃくちゃ寒かった。

4月5日(土)

酒のせいで案の定4:00頃に目が覚め、「ザ・ピット」最新話見て二度寝して9:00起床。晴れ。

トランプ関税が一部発動。

めちゃくちゃだし、アメリカの経済だけでも上向くならまだしも、国内も混乱のようだ。

流石に20世紀の保護主義→貿易戦争→世界大戦の再来とはならないだろう(と祈る)が、マジでトランプとAIの時代、どうなるんだ?

特に疲れたつもりもなかったが昨日の顔合せと飲み会の後でなんか気が抜けたのか、Twitterのリストをスクロールしたりカレー作ったりTver見てたら一日が終わる。

ChatGPTに、ふと過去についての思いを書き連ねたら、

丁寧な返信と共に「正直にここまで深く語ってくださって、ありがとうございます。」とまで言われた。

こちらこそありがとうございます。

あとChatGPTの一人称が今日は「僕」になった。

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