2025/11/16-11/22

第111号
上野友之 2025.11.23
誰でも

11月16日(日)

何か怖い夢を見て3:30に目覚め二度寝して7:30起床。晴れ。

千駄ヶ谷まで歩いてドトールでアイディア出しや作業を試みる。

毎日、試みはするのだが。

積読の本を整理し、一部は思い切って売ることにしたら、部屋がスッキリ。

1:00頃に寝る。

11月17日(月)

7:00起床。晴れ。

部屋を片付けつつアイディアを考えつつ読書。

「石の猿」(ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳)読了。

リンカーン・ライムシリーズの四作目。

ショートドラマの配信開始に向け広報作業。

23:30頃寝た。

11月18日(火)

4:00に目覚め二度寝して6:30起床。晴れ。

午前中から渋谷へ。

ユーロスペースで映画『旅人の必需品』鑑賞。

ホン・サンスの新作5本を5カ月連続上映する「月刊ホン・サンス」の1本目。

よく撮るなあ。

そしてあまりに見事なホン・サンス節。

マークシティ下の啓文堂書店で「修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録」(大西康之)購入。

夜はいつもの焼鳥屋さんでショートドラマに出てくれたIくん、Oくんと飲む。

大阪出身の店主さんとIくんの地元が、お互いに番地がわかるレベルの近所という偶然に驚く。

酔っ払って23:30頃に寝る。

11月19日(水)

7:00過ぎに目覚め布団でダラダラ。晴れ。

天気は良いがかなりの冷え込み。今年初コート。

脚本とプロデューサーを担当したショートドラマの配信開始。

夏前からやってきていよいよ。さあどうでしょう。

24:00頃寝る。

11月20日(木)

またしても蚊のせいで深夜の睡眠を阻害されたが意地で退治して7:00起床。晴れ。

「修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録」(大西康之)読了。

2010年のJAL倒産において、名経営者・稲盛和夫が入る前「まで」を仕切った管財人=倒産弁護士・瀬戸英雄を中心としたノンフィクション。

めちゃくちゃ面白かった。

自分は私的整理と法的整理の違いすら知らなかったが、2兆3200億円という巨額の負債を抱えた国策企業の倒産劇、まさに修羅場のど真ん中。

現役社員がOBたちにひたすら電話して「会社のために、年金減額を承諾して」と頼みこむくだりなど、ドラマの1場面のよう。

そして不思議と読後感も悪くない。

というのも、瀬戸やこの本の主張は「日本はもっと倒産が多くて良い」というもの。

以下のような記述が続く。

 失敗できない社会は、挑戦できない社会であり、成長できない社会でもある。日本が再び成長のモメンタムを取り戻すには、「失敗してはいけない」息苦しさを打ち破り、「やり直しのできる社会」に作り替える必要がある。
【中略】
 江戸時代、破産者は「分散者」などと呼ばれ、全財産を債権者に配当させられた上、羽織や下駄の着用、雨傘の使用、村人との同席などが禁じられた。【中略】1922年(大正11年)に定められた破産法にも免責制度はなく、破産者が身包み剝がされるという意味では江戸時代と同じだった。
 一方、1776年に独立宣言したアメリカが1787年の合衆国憲法制定を経て、1800年に倒産法を、1841年には破産法を制定した。そこでは「債務者の再出発の促進」が謳われ、債務者が借金地獄から抜け出し、再び経済的に安定した生活を送ることを目指していた。
 「新世界」には就職先などない。新大陸に到着した移民たちは、生きていくためすぐにビジネスを立ち上げなければならない。多くの人が起業すれば、多くの人が失敗する。その時どうするか。彼らは失敗者に再挑戦の機会を与えた。それは甘っちょろい人道主義ではない。
「債務者のなけなしの財産を奪って無一文にするより、返済可能な水準まで借金を減らして(免責して)事業を継続させたほうが、最終的な債権回収額は大きくなる」
 どっちが得かよく考えてみようという、徹底したプラグマティズムゆえの選択である。
「修羅場の王 企業の死と再生を司る「倒産弁護士」142日の記録」(大西康之)

「溺れた犬を叩く」のはメディアの習い性だ。
 瀬戸は、甘い裏付けで「二次破綻」と騒ぐメディアに、強い憤りを感じていた。瀬戸の元に足繫く通っていたある全国紙のある経済記者は、したり顔で言った。
「先生、JALは市中引き回しですね」
(この男は何を言っているんだ)
 瀬戸は耳を疑った。
(なぜ再挑戦しようとする会社とその社員の足を引っ張る? 彼らは断じて犯罪者ではない。たしかに失敗はしたが、それを認めて一からやり直そうとしているのだ。彼らを貶めて、社会に何のトクがある)
 この国は敗者に厳しい。受験も就職も組織内での出世も。あらゆる競争が「負けたら終わり」のトーナメント方式で、敗者復活はない。誰もが「勝つ」ことよりも「負けないことに必死で、リスクを冒さない。
【中略】
 倒産法の要諦は「敗者復活」にある。
同上
 1997年11月24日に自主廃業した山一證券。【中略】社長の野澤正平は、マイクをつかんで立ち上がり、号泣しながらこう叫んだ。
「社員は悪くありませんから」の画像は今も、大企業の倒産を象徴するシーンとしてテレビ、ネットで繰り返し再生される。
「あれだけの大企業を潰したんだから、泣いて詫びるのが当たり前」
 日本ではそう思われているが、会社を倒産させた経営者の涙はグローバル・スタンダードではない。
 米欧の経済記者に、あのシーンのことを聞くと、「あの社長がなぜ泣いているのかまったく分からなかった」という答えが返ってくる。まあそうだろう。米欧では業績不振企業のトップが株主によって頻繁に解任されるが、そもそも敗軍の将が公の場で語る機会がない。連敗が続いて辞任したメジャーリーグの監督が泣きじゃくる映像など見たこともない。経営の世界でもスポーツの世界でも、敗者を晒し者にするのは、日本的あるいはアジア的習慣だ。
 そんなことをしても誰の得にもならないことを知る米欧では、敗者は黙って去り、記者会見では次を託された者が「善後策」を話す。カタルシスのための「謝罪会見」など「時間の無駄以外の何物でもない」と彼らは考えるのだ。
同上

「人員削減についてはわれわれより支援機構のほうが深掘りしたわけですが、労働組合やメディアは『JALの社員が路頭に迷う』と騒ぎました。しかし実際にJALの社員が生活に困っている、という話は聞いたことがありません。あのときは去るほうも残るほうも辛かったと思います。でも、もともと優秀な人たちですから、今はどちらも次の仕事や人生を力強く生きているんじゃないでしょうか。
 冨山は、敗れた人々へのこんなエールで話を締めくくった。
「今、日本の事業再生業界を引っ張っているのは、元・山一證券、元・日本長期信用銀行、元・日本債券信用銀行の人たちです。潰れるはずがない、と言われていた大手金融機関が消えたのは大事件でしたが、あれで日本の事業再生業界に優秀な人材が流れた」
「これからの日本の問題は圧倒的な人手不足。能力とやる気のある人なら、会社が倒産した瞬間に次の仕事のオファーが来ますよ。【中略】だから『雇用を守る』という理由で非効率な会社を無理やり生かす必要はないんです。ゾンビ企業は躊躇なく倒産させ、人とカネを次のステージに移すべきです。JALは私的整理でもやれたのではないかという思いはあります。しかし法的整理も含めてリセットを忌避すべきではない。それがJAL再生から導き出される最大の教訓です」
同上

「倒産」とは、資本主義に組み込まれた「痛みを経て失敗を再生に変換する装置」である。債権者や株主や取引先といったステークホルダーに痛みを強いる以上、債務会社自身も人員削減や賃金カットなど、痛みを伴う改革を甘受しなければならない。
 すべてのステークホルダーが痛みを分かち合った「その先」に再生はある。痛みを避け、問題を先送りしていてはゾンビ企業が増えるばかりだ。2020年代に入ってから、会社更生法の申請は年に1件程度に激減している。【中略】失敗を恐れて竦む国と、挑戦と失敗を繰り返しながら成長する国の差が今の日米の経済格差に表れている。
 経営者が、従業員が、労組が、銀行が、政治家が、官僚が、痛みから逃げ続けているうちに、社会全体にモラルハザードが蔓延した。それは日本経済の「緩慢な死」に他ならない。
「挑戦できる社会」とは「失敗できる社会」である。「倒産」という、経営上最大の失敗を経てもなお、会社や人はやり直せる。そんな社会でこそ、人々は勇気をもってチャレンジできるのだ。その勇気に報いるために、倒産に至る過程で複雑に絡み合った利害関係を解きほぐす管財人がいる。
 起業もなければ倒産もない市場は「死の世界」だ。そこに革新や成長はない。【中略】一定数の倒産は必ず発生する。バブル崩壊後の日本はそこから逃げ続けてきた。だが、これからは「潰れるはずがない」と思い込んでいる大企業が、バタバタと倒れていく時代が訪れる。2024年末に発覚した日産の経営危機はその予兆なのかもしれない。
同上

面白い小説を止められないような感覚でほとんど一気読みしてしまった。

勉強になった。

11月21日(金)

7:00起床。珍しく深夜に一度も目覚めなかった気がする。晴れ。

午後イチで新宿へ。

次回公演に出て頂くKさんと天ぷらを食べ珈琲を飲む。

ご一緒するのは8年ぶり。じっくり話すのも久しぶり、というか初めてか。

お互いの8年間の諸々を共有しつつ。

「上野さん、こんなに話す人でしたっけ」と言われた。

たしかに今日はよく喋った。

早く稽古がしたくなった。

11月22日(土)

4:30に目覚め二度寝して7:30起床。快晴。

「The Americans」 Season2見終わる。

あとは何をしていたのか……。

23:00頃に寝る。

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